一番逢いたかった

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明日の手術に対し主治医から、“父は高年齢のため、体力が心配。何か生きる希望が湧く物でもあればいいのですが・・”と言われた。

「“握り仏”を用意します」と私は即答した。樹齢千年の樹で作られた長さ15cmほどの手彫りの仏様。手のひらでギュと握り続けると願いが叶えられるという不思議な物。少し高価な物だが、父のためなら。

「お父さんこれ」
「“握り仏”かあ。ありがとう」
「握ると願いが叶うらしいよ」
お父さんの願いってなんだろ。逢いたい人とかいるのかなぁ。
手術台で父はゆっくりと眠りにつく。

「ワンワン!」
「茶太!久しぶりだったなぁ。元気だったかぁ。そんなに舐めるなって。わかった、わかった。」
「クゥ〜ン」
「長いこと寂しい思いをさせてごめんな。もお、どこにも行かないから安心しろ。お〜よしよし。」

術後、『手術中に“握り仏”をギュと強く握った父は嬉しそうだった』と主治医から聞いた。
その他
公開:18/04/05 20:39

まりたま

いつか絵本を1冊出せたら...
そう思いながら書いてます。
少しだけホッコリしていただければ嬉しいです。
でも、たまにブラックも書きますけど。

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