桜色
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鷹職人らしい彼は、このコンビニの常連さんだ。
夕方になると決まって弁当を買いに来る。
「いらっしゃいませ。お弁当、あたためますか?」
「それより姉ちゃん、俺あっためてよ、ほらハグ」
こういうやり取りにも少し慣れてきた。私はレジの横にある募金箱を指差した。
「ここにお金を入れると、あたたまりますよ」
「なにそれ、まあいいや、はいよ(募金する)」
その後ろに並んでいた親子連れの女の子が、それを見ていた。
「お兄ちゃん。えらいね」
「え?そうか、アハハハ」
彼は照れくさそうに弁当を受け取り、帰っていった。
あくる日。彼はいつものように、弁当を持ってレジにやってきて言った。
「あっためてやるよ」
彼は胸ポケットから皺々の千円札を募金箱に入れた。
今までに見せなかった笑顔だった。
彼が去ったあと、桜の花びらが舞い込んできた。それが心の底にひらりと落ちて、深いピンク色に染まっていくような気がしていた。
夕方になると決まって弁当を買いに来る。
「いらっしゃいませ。お弁当、あたためますか?」
「それより姉ちゃん、俺あっためてよ、ほらハグ」
こういうやり取りにも少し慣れてきた。私はレジの横にある募金箱を指差した。
「ここにお金を入れると、あたたまりますよ」
「なにそれ、まあいいや、はいよ(募金する)」
その後ろに並んでいた親子連れの女の子が、それを見ていた。
「お兄ちゃん。えらいね」
「え?そうか、アハハハ」
彼は照れくさそうに弁当を受け取り、帰っていった。
あくる日。彼はいつものように、弁当を持ってレジにやってきて言った。
「あっためてやるよ」
彼は胸ポケットから皺々の千円札を募金箱に入れた。
今までに見せなかった笑顔だった。
彼が去ったあと、桜の花びらが舞い込んできた。それが心の底にひらりと落ちて、深いピンク色に染まっていくような気がしていた。
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公開:18/04/05 13:02
更新:18/04/09 16:48
更新:18/04/09 16:48
桜
花びら
恋
コンビニ
ショートショートの神様、星 新一を崇拝しています。お笑い好きで怪談も好き。
お笑いネタのような作品が多いですね(笑)
【受賞作品】
「渋谷シティ」
渋谷ショートショートコンテスト優秀賞受賞。
「我が家の食卓」
ベルモニーショートショートコンテスト入賞。
「電車家族」
隕石家族ショートショートコンテスト入賞。
「大男の力自慢大会」
「スカイフィッシング」
空想競技2020ショートショートコンテストW入賞。
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