8
94
夏休みも半ばを過ぎた八月の日暮れ。近所に住むタケちゃんが、僕んちの縁側にこっそりとやってきた。
タケちゃんはそのまま僕の手を引いて外へ出ようとするので、僕は「母ちゃんに叱られる」と首を横に振って断った。けれど「いいから」と強引にひっぱるタケちゃんには勝てず、薄暗くなった庭を僕らはそっと抜け出した。
タケちゃんに連れられてたどり着いた先は、綺麗な川のほとりだった。
きょろりと周りを見渡すと、季節外れの彼岸花のような形の、黄色い花が咲いていた。
「見てろよ」
タケちゃんはその一本を優しく手折ると、川の水にそうっと花の先を沈める。
すると水の中で花びらがわずかに動いて、チカチカっと次々に光った。そのままゆっくりと引き上げられた花は一片ずつ光輝いて、ぽうっと淡い灯りを灯したまま、暗い空へと舞い上がっていった。
「線香花火って呼ばれてるんだって。別名を、お盆花」
八月十五日。よく晴れた夜だった。
タケちゃんはそのまま僕の手を引いて外へ出ようとするので、僕は「母ちゃんに叱られる」と首を横に振って断った。けれど「いいから」と強引にひっぱるタケちゃんには勝てず、薄暗くなった庭を僕らはそっと抜け出した。
タケちゃんに連れられてたどり着いた先は、綺麗な川のほとりだった。
きょろりと周りを見渡すと、季節外れの彼岸花のような形の、黄色い花が咲いていた。
「見てろよ」
タケちゃんはその一本を優しく手折ると、川の水にそうっと花の先を沈める。
すると水の中で花びらがわずかに動いて、チカチカっと次々に光った。そのままゆっくりと引き上げられた花は一片ずつ光輝いて、ぽうっと淡い灯りを灯したまま、暗い空へと舞い上がっていった。
「線香花火って呼ばれてるんだって。別名を、お盆花」
八月十五日。よく晴れた夜だった。
ファンタジー
公開:18/06/19 23:55
高野ユタというものでもあります。
幻想あたたか系、シュール系を書くのが好きです。
ログインするとコメントを投稿できます