乱数エレベータ

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複数の行先階ボタンが点灯している。我が社のエレベータ。ドアが閉まる。次の瞬間、ひとつのボタンを除いて消灯する。

「あー」エレベータ内がため息で満ちる。そんな中、私は心ひそかに笑っていた。「ラッキー」
表示されている階数は、私の居室の階数だった。

我が社のエレベータは乱数エレベータと呼ばれるものだ。押されている行先階ボタンのうち、ランダムで一つの階が選択され、そこに停まる。

乱数エレベータになった理由は単純である。昇りエレベータは常に下の階から順番に停まる。必ず上の階の人間は後回しにされてしまう。それは不公平ではないか。社員から意見が出た。

この前は太鼓腹の社長が延々とエレベータに乗っていた。社長室階と言え、特別扱いはしてくれないのだ。

困ったこともある。取引先のお客様が、1時間も応接階に停まれなかったのだ。あの会社には約束の1時間前には着いていた方が良い。そう噂されているらしい。
その他
公開:18/06/19 16:06

いづみ( 東京 )

文章を書くのが大好きです。

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