相合傘の不思議

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期末の補修を終えて、僕は教科書やプリントをバッグに詰め込んだ。いつもより重いバッグを抱えて学校を出ようとすると雨が降っていた。
バッグの奥から折りたたみ傘を取り出した時、後ろから「あ、降ってる」と声がした。
僕の心臓がトクンと跳ねる。顔が火照るのがわかるから、余計に冷静を装う。
傘を広げて「隣あいてるよ~」と言ってみると、君が「ありがと」と、躊躇いもなく僕の隣に体を寄せてきた。
やばい。
冗談だなんてもう言えない。
視線を合わせられなくて前を向いたまま少し歩いた。君は何かに躓いたのか、僕の傘に手を添えて傘が傾いた。
「わ、ごめん」
「大丈夫?」
そこでようやく君の顔を見て、濡れた前髪にドキリとした。
それから何の話をしたのか全く覚えてない。最寄りの駅がもっと遠かったらよかったのに…。なんて思ったりしてた。

駅で君と別れて、急に思い出した。
忘れていたのが不思議だった。

バッグが重い…。
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公開:18/06/21 06:42
更新:18/06/21 12:51
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のりてるぴか( ちばけん )

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ようやく300作に到達しました。ここまで続けられたのは、田丸先生と、大原さやかさんと、ここで出会えた皆さんのおかげです。月の文学館は通算24回採用。これからも楽しいお話を作っていきます。皆さんよろしくお願いします。

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