めぇ〜しをどうぞ

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昼下がりの商社を訪れたのは、目の離れた色白の男だった。新規営業ならば、主任の僕がすぐに追い返す。しかし今日は違った。
「突然失礼します。私こういうものです」
男が名刺を取り出し、「ヤギ トシオ」と名乗る。
その名刺を見た途端、なぜか口の中が涎でいっぱいになった。
「…どうしました?さ、めぇ〜しをどうぞ」
僕は思わず名刺を取り、ムシャムシャと食べた。
「お、おいしい!」
名刺がこんなに美味しいなんて。
「秘密をお教えしますよ。まずこちらの資料をどうぞ…」
ヤギが営業資料を取り出す。僕は夢中でそれを食べた。
「どうです?美味しい案件でしょう?」
僕は大きく頷き、気がつくと契約書にサインをしていた。


「主任、今月の決済、多額の支払いが」
「…それが、記憶にないんだ。妙な男の営業にサインしたのが、先月のことで」
「えっ!それは詐欺では」
「いや、ヤギだったと思うんだけど…」
ファンタジー
公開:18/06/20 22:46
更新:18/06/20 22:51

あおい( 北海道 )

結婚し、幸せになりを潜めて3年。
再び書きたくて登場。
多分そのうちまた消える。

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