割れやすい太陽

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家で昼食のジャガイモを食べていたら、窓の外が突然真っ暗になった。街が騒がしくなる。どうやら太陽が割れてしまったようだ。
思ったよりも長持ちしたな、なんて考えていると、市長から電話がきた。
「先生、取り替えお願いします」
電話を切り、作業着に身を包む。新しい太陽を片手に、家のそばにあるハシゴを登り始める。
しばらくして、空を覆うゴツゴツとした岩肌が見えてきた。世界の天井だ。
壊れた太陽をソケットから取り外す。今回のはガラスの強度を上げて、フィラメントも変更してみた。
世界に光が戻り、街の騒ぎも収まっていく。家に帰るとまた電話がきた。
「お疲れ様です。先生の太陽は、前任者のものよりも明るいと評判ですよ」
どうも、とだけ答えて電話を切る。数年ぶりでも意外と声は出るもんだ。
次の取り替えはいつだろうか、刑期満了とどちらが早いかな。
ぼんやりと考えながら、すっかり冷たくなったジャガイモを口へ運んだ。
SF
公開:18/06/20 20:39
更新:18/06/21 00:42

かわかむ( 茨城 )

クスっと笑っていただけるような、そんな作品が書ければと思っています。

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