七夕マン

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薄暗い病院の待合室に飾られた笹。
その笹にはたくさんの願い事が書かれた短冊がつるされている。
風もないはずなのにその笹が、揺れた。
何かがいる。白色の、得体の知れない何か。
僕はとっさに柱に隠れた。
密かに願い事をつるそうと夜中に病室を抜け出して来たのに、どうしよう。
その時だった。
気が付くと彼が僕の目の前にいたんだ。
赤の全身タイツ、胸には七の文字、顔はパンダメイク。
「君の願いを叶えるために七夕星からやって来た七夕マンだ!」
七夕マンは「とりゃあ!」と、白色の何かと戦い始めた。
ギャー!
すぐに白色の何かは断末魔をあげ非常口から出て行った。
「ありがとう七夕マン」
僕がお礼を言うと七夕マンは僕の持っている『七夕マンに会いたい』という短冊を笹に吊るしてくれた。

「師長、相談だが来年からは七夕マンはもう止めないか?」
「何言ってるんですか先生。子どもたちが喜ぶ顔が見たくないんですか?」
ファンタジー
公開:18/06/20 21:00
更新:18/08/10 09:09

杉野圭志

元・松山帖句です。

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