七夕の魔法

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都会から転校して来た君はいつも一人で、僕は短冊に『友達になりたい』って書くのが精一杯だった。

あの日、家が近所の僕たちは、距離を空けて同じ帰り道を歩いていた。
話しかけたい、話しかけたいって呪文のように僕は思った。その時。
頭上から白い物が舞い降りた。
それはあっという間に世界を染め上げた。
今日は七月七日なのに。
僕らは呆気にとられた。
君は足を滑らせて転んだ。
「大丈夫?」と駆け寄る僕の手を取って、君はあははと笑った。僕はどうしたらいいかわからず雪を投げつけた。
君の顔ではじけた雪は一瞬僕らを静かにさせて、また君はあははと笑って今度は僕に雪を投げた。僕らはたくさん笑った。

それから僕らは魔法にかかったみたいに仲良くなった。
僕の願いは、叶った。

あれから毎年 短冊には『ずっと一緒にいたい』って書いている。
あの日の雪はすぐにとけたけど、僕らの魔法はまだまだとけそうにない。
青春
公開:18/06/17 22:50

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