金山の紫陽花

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その山は、かつて金山として栄えていた。しかし金を掘りつくしたとき、人々は山を捨てた。今は「立ち入り禁止」の立て看板があるだけだ。

六月。山の紫陽花が見頃になる。誰も見る人はいないが、花は咲く。白、ピンク、うす紫、青。雨が降るたびに、花は色を変える。そして最後に、金色になる。まるで地中に残っている金を吸い上げたように、全ての紫陽花が一斉に金色へと変わる。

月夜の下、山が金色に覆われる。月の光が反射して、四方八方に光の筋が伸びる。山全体が光り輝いて見える。その様は、栄えていた頃の金山を彷彿とさせる。

空が白み始めると紫陽花は徐々に輝きを失い、日が昇る頃には全て枯れてしまう。山の賑わいは終わりを告げ、ただの寂れた金山に戻るのだった。
ファンタジー
公開:18/06/17 21:10

いづみ( 東京 )

文章を書くのが大好きです。

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