願う落語と願い事

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「願い事っていうのは本の頁に書くもんだ。見ろ、『願』っていう字の右は頁って書かれてる」
「ですがご隠居、この本は洋書、漢字が書いていない」

主任を務めた師匠の落語が終わり、緞帳が下りる。弟子の私は袖で勉強させて頂いていた。
今日は七月七日、七夕である。
毎年この日は、師匠である天ノ川亭織彦が新作落語『願い事』を演じる事になっていた。
「時に、七夕の願い事がまだなら今書いたらどうだ」
帰り仕度をする師匠から提案があった。
「そうさせて頂きます。ちなみに、師匠は?」
「お前の芸が良くなるようにって書いてやったよ。いいから、さっさと書いた書いた」
私は師匠に頭を下げた後、言われるがまま筆と紙を取り出し、願い事を書こうとした。

ペチッ。

私は何故か扇子で叩かれてしまった。
「阿保か。落語家が書くって言ったら、まず扇子と手拭いを使えってんだ。ったく、俺の願いが叶うのは当分先かね」
その他
公開:18/06/16 22:34

ゴッペ

だいぶ休んでしまいましたが、またちょくちょく投稿できればといいなぁと思います。
コメントもありがとうございます。
どうぞよろしくおねがいします

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