「願い」の病院

当院には毎日たくさんの患者がやってくる。彼らは皆「願い」という病に侵されている。
健全な「願い」は人に夢と希望を与えるが「願い」は叶わずに年月が経ちすぎると重荷になる。あまりにも壮大な願いを持ったが故に、それが叶わない苦しみに自ら命を絶つ者さえもいるのだ。

当院では患者から「願い」を預かり入院させ、適切な処置を及ぼす。「願い」を持ち主の身の丈に合った大きさにしてやったり、叶わないことで抱えてしまった妬み嫉みなどを取り除いてやったりするのだ。

治療が終われば「願い」は患者の元に返される。しかし稀に受け取りに戻らない者もいる。「願い」を持っていた時の重さが忘れられず「願い」を拒否する者が存在するのだ。

受取人のいなくなった「願い」は「願いバンク」に登録され「願い」を欲している者たちへ移植される。「願い」が重荷になる者がいる一方で、なにかを願うことを欲している者も世界にはたくさんいるのだ。