ここにはいない、でも恋しい君へ

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私、恋をしてる。突然思った。
ありえない。家に閉じこもって小説ばかり書いてる私に出会いなどない。
胸に手をおいてよく考えた。そうか、これは小説のヒロインの気持ちか。主人公への恋心だ。
主人公は無頼派でニヒルなギャングマン。足を洗おうとしている。
話はクライマックス。男がヒロインの命を助けたところだ。
「ありがとう。あなたのお名前は?」
「知らない方がいい」
「もう一度会える?」
「いいや、俺のことなど忘れるんだ」
ああ、切ない。この人と私は一緒にはなれないのね。
「せめてあなたの幸せを主に祈らせてください」
「俺は創造主なんて信じちゃいない」
なんだと? 創造主とは私のことじゃないか。
お前、お茶目な性格にしてやろうか!
「やっぱり祈ってくれ」
「神を信じるのね?」
「信じる。そして俺の名前は早乙女愛。お星様に祈ってくれたらいつでも会いに行く」
「さよなら。永遠に」
……なんか、ごめん。
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公開:18/06/16 17:25
更新:18/06/16 17:26

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