人数合わせの羊羹

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取引先からお中元に羊羹をいただいた。超有名店の、一日限定20本というものだ。開店2時間前から並ばないと買えないという噂もあるほどのレアものである。
社内は色めき立った。
「これは社員全員平等で」お局の鶴の一声で、羊羹を社員数で等分に切り分けることにした。半分切ったところで

「ただいま戻りました」なんと営業が一人帰ってきた。
え゛、どうする、彼は人数に入れてなかった。動揺が走る。そのとき、
なんだか羊羹が伸びたような気がした。
試しに計ってみる。すると確かに一人分伸びている。さすが超有名店のレアもの。

一安心して、残りの半分を切り分ける。最後の包丁を入れて、さあ配ろうとしたとき、ガチャっとドアが開いた。

あ、社長を忘れてた。

涙目で羊羹を見ると、なんと最後の一切れがまた伸びて二切れ分になっている。何事もなかったかのようにそれを切り分け、「社長、お茶の時間です」
事なきを得たのでした。
その他
公開:18/06/17 14:34
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いづみ( 東京 )

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