俺々

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大学生活ど真ん中にあった俺は、とにかく体が足りていなかった。
遊びたい、バイトしたい、彼女が欲しい、でも単位も欲しいし就活もしたい…。
ある日目を覚ますと、何人もの俺が家の中にいて、皆、各々ゲームや勉強や就活に勤しんでいた。
各俺の体験は、多少のラグはあるが全て俺達に共有されるようだ。こいつはいい。

一年ほど経ち、念願の彼女と同棲を始めたはずの俺が家に駆け込んできた。曰く、街中で俺が別の女と仲良く歩いているところを彼女に目撃されたと。
厳密には彼女が見たのはバイト担当の俺とバイト先の店長なのだが、何度説明しても彼女は信じず、結局別れ話を切り出されたらしい。
振られた俺は大泣きした後、「お前のせいだ」と呟き、台所の包丁を掴んでベッドに飛び乗った。
そこにはバイト帰りでくたくたの俺がぐっすり眠っている。

彼の悲しみが俺に伝わるまで、もう少し時間がかかる。

血飛沫が、ゆっくりと上がった。
ホラー
公開:18/06/17 12:05
更新:18/08/13 01:03
七夕コンテスト2018 ねがいごと

詩のぶ

小説、詩、短歌、俳句、コピーなど、読んだり書いたりするのが好きです。ショートショートはこれまであまり馴染みがなかったので、ここで色々試しながら勉強できたらと思っています。
何か作るとtwitterで呟いてますのでよろしかったらそちらでも。

Twitter @shinobu_yomogi

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