ホームラン

「父さん、今日の試合でホームラン打つから。そしたら明日、手術を受けてくれるね？」
私の問いかけに幼い娘はこくんと頷いてくれた。
これは男として、父として負けられない試合だ。
バッターボックスに立つ私は緊張の面持ちで球を打った。
大きく放物線を描く打球は観客席へと届き、サヨナラホームランが決まった。

「この勝利を誰に伝えたいですか？」
試合終了後、アナウンサーが聞いてくる。
「明日、手術を受ける娘に」
娘は体が弱く、これまで何度も手術を受けている。
しかし、一向に良くならない体。
それでも次こそはと、私と娘は負けられない戦いを続けている。

-１０年後-
「今日も見事なホームランでしたね。この喜び、誰に伝えたいですか？」
アナウンサーの質問に私は勿論「明日、手術を受ける娘の為です」と答える。

ただ、娘が明日受けるのは二重瞼にする整形手術。
娘よ…これは父さんのホームラン関係なくないか？