大器晩成型美人の人生

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「貴方は美人になるわ。でも大器晩成型だから、決して焦らないで」

子供の頃、母の趣味で連れて行かれた怪しげな露店の占い師は、私の手を食い入るように見つめてそう言った。
子供をアイドルにすることを夢見ていた母は占いの結果に大喜びだったけれど、もとより平凡な顔の私はなかなか美人にはならなかった。
小中と特にモテることもなく、母が勝手に出した履歴書は書類審査すら通らなかった。
それでも高校二年には初めての彼氏ができたし、成人後はそれなりの会社に就職。同じ部署の冴えないが優しい人と結婚して三児の母となり、ささやかながら幸せな人生を送った。
今、私は皺の寄った顔で病院の天井を見上げている。
やはりあの占いは当たらなかったなと思いつつ、満ち足りた気持ちで私は目を閉じた。


「見て、お母さんすごく綺麗な顔してる。絶世の美女より美人かも」
涙を拭いながら娘がそう言うのを川の向こうで聞いて、思わず笑った。
その他
公開:18/06/14 18:30
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ゆた

高野ユタというものでもあります。
幻想あたたか系、シュール系を書くのが好きです。

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