新・七夕伝

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鳥国に尾長と江長という双子の姫が居た。尾長は勝気、江長は内気。だがそれを除けば二人は瓜二つだった。ある日、同盟国である崇国の皇太子が訪れ、王は江長を妃にと推した。彼は大人しい江長を気に入った。しかし太子に一目惚れをしていた尾長が激しく嫉妬し、江長に冤罪をかけ王宮から追放してしまった。江長は僻地にある竹林に囲まれた塔へと幽閉された。
「誤解を解かなくては」
江長は小さな窓から手を伸ばすと、門番に尾長へ手紙を渡す様頼んだ。だが門番は軽い返事だけ返し手紙を捨てていた。それを知らぬ江長は、紙は愚か食事すら出されなくなっても、身に纏っていた着物を破り書き続けた。すっかり痩せ細った江長は次第に起き上がる事すら出来なくなっていった。
「どうか…私の手紙を」
その時突風が吹き荒れ、捨てられた布の切れ端達が舞い上がり、笹の葉に絡まった。牢からは音が消え、静かに色取り取りの布に書かれた願いだけが揺れていた。
ファンタジー
公開:18/06/14 18:19
更新:18/06/14 18:23

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