2
87

「写真を撮ると魂が抜かれる」
という迷信じみた話を耳にしたことはあるだろうか。
真ん中に写ると魂が抜ける、分身が紙切れ一枚という媒体となって存在する為に魂が削ぎ落とされる、という理由があったりもするが、実際のところ本当かどうかは定かではない。
しかし、もし本当に写真で魂が抜けるのだとしたら、昔と今では"写真"の意味合いが変わってくるのかもしれない。
「ねえママ。あのおじいちゃん、さっきからずっとケータイみてわらってるよ」
「きっと楽しいことがあったのよ」
公園のベンチに座って携帯を眺める私の様子が余程不思議なのか、近所の子どもたちは首を傾げるばかり。
「どうしたの、あなた」
液晶越しに私へ話しかける穏やかな声。
「いや、なんでもない。今日はどこまで散歩に行こうか」
携帯を胸ポケットにしまい、私はお気に入りの散歩道へと向かうべく腰をあげた。
若かりし頃に撮った妻の写真が、画面の奥で笑った。
その他
公開:18/06/16 00:35

あべかわ

思いついた時にぼやぼや書いてます

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容