筍に願いを

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「そろそろ、七夕の準備をしようかね」
ぎこちなく座っていた私の隣から声が聞こえた。
数日前に引っ越してきた土地は、竹林に囲まれた静かな村だ。夏になると、目の前が爽やかな青緑色に包まれるそうだ。
だけど、今はまだ春。
私は耳を疑った。
「今はまだ4月ですよ、竹の収穫は7月じゃないですか?」
勇気を振り絞って口を開けば、隣から豪快な笑い声が聞こえた。
「そうだったね、アンタはまだ来たばかりだからこの村の七夕を知らないんだね」
そう言うと、足袋を履いて茶色の地面を慎重に歩き、ピタリと止まったと思うと地面を掘っていった。
「うちの村はね、筍の先に特別な短冊を付けておくのさ。
成長した竹の先にある短冊に書いた願い事は空に近い分、叶いやすくなると言われていてね」
ホラ、と短冊が飾られた筍を見ると私は思わず笑ってしまった。

新しく来た子と天の川を眺めたい

その願い事は叶うだろうな、そう確信した。
ファンタジー
公開:18/06/15 20:45
更新:18/06/15 20:52
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