神への手紙

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その少女の写真は笑っていた。乾いた笑いだ。その瞳の奥は、絶望を物語っている。少女が住む村人たちに希望を与えることができるだろうか。写真家の青年はそう考えていた。その答えに辿り着いた時、青年は空港からその村へと旅立った。
七月七日。二度目の再会に村人たちは歓喜し抱き合った。あの少女は村長の娘だった。青年は少女に会い、リュックから束にした短冊を渡した。今日、願いを書くと神様が叶えてくれる。神様への手紙だと説明した。少女は村人たちに短冊を配り、村の神木の枝に、それぞれの願いを綴り紙縒で括り付けた。それぞれの願いは一つだとわかった。
青年は帰国し募金活動に励んだ。雨の日も風邪の日も。願いを背負って。

七月七日。夕空に星が灯った。村人たちの願いは叶えられ、青年と村人たちは歓声を上げた。一つの井戸が完成したのである。もう泥水を飲むことはないのだ。

神は、絶望ではなく、希望に手を差し伸べたのである。
その他
公開:18/06/15 19:35
七夕 短冊 神様 願いごと 村人 青年 手紙

豊丸晃生( 大阪 )

ショートショートの神様、星 新一を崇拝しています。お笑い好きで怪談も好き。
お笑いネタのような作品が多いですね(笑)
【受賞作品】
「渋谷シティ」
渋谷ショートショートコンテスト優秀賞受賞。
「我が家の食卓」
ベルモニーショートショートコンテスト入賞。
「電車家族」
隕石家族ショートショートコンテスト入賞。
「大男の力自慢大会」
「スカイフィッシング」
空想競技2020ショートショートコンテストW入賞。

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