奇妙な彼女

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「いつか死が二人を別つとしても、1秒でも長くあなたと一緒にいたいわ」

「こんな男を愛するなんて、君も奇特だね」

だって彼は、私にないものをすべて持っていた。太くたくましい腕、遠くまでよく響く声、常識的なふるまい。

だのに、彼は時折「死んでしまいたい」とつぶやき、私を苦しめるのだった。

「折角会えたのになんてこと言うの! 死ぬくらいなら、私を殺してからにしてちょうだい」

「殺す? 生きる気力もない僕が、君を殺すなんてできるわけがない」

「だったら私があなたと一つになって、どこまでも一緒に生きてやるわ! えいっ」

そうして彼女はどこかへ駆け出し、消えてしまった。

彼女がいなくなってから、僕は妙な幻聴に悩まされるようになった。

「一人で死なせやしない。私はいつもここ」

「あなたの腕、あなたの声も心も、死んでも全部私のものよ!」
ホラー
公開:18/06/13 18:39
更新:18/06/13 23:31

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