ホタルダ

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七夕の夜の蛍。
その中にひときわ大きな光。
蛍田だ。
俺が「おい蛍田」と呼ぶと光るのをやめてこっちに歩いてきた。
環境を守ることに一生懸命だった蛍田は気づいたら蛍になっていたらしい。だから今は清流にしか住めない。たまに無作法なキャンパーが来るとその尻の光を青い怒りの炎に変え灸を据えてやるそうだ。
「なあ」蛍田が言った。「ふと思ったんだけど、僕ってもう死んでんじゃないの?」
「はあ?」
確かに尻が光る突然変異を遂げたが、蛍田はこうして俺の目の前にいるじゃないか。
「蛍ってよく死んだ人の魂に例えられるじゃん?僕がこんな蛍マンになったのは・・本当は死んでるのに、君が心の中で僕は生きてるって思ってるからじゃないかなと」
理系の蛍田の話はいつも難しい。
「試しに『蛍田、安らかに眠れ』って天に祈ってみてもらっていい?」
それで気が済むのならと俺が祈ると蛍田は大きな光の玉になり閃光を残して星になった。
ファンタジー
公開:18/06/13 23:34
更新:18/06/14 21:10

杉野圭志

元・松山帖句です。

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