この声が彼に届きますように

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彼が私を見つけてくれた。「可愛い」と言って抱きしめてくれた。少しだけど一緒に楽しい時間を過ごした。
なのに今、「ごめんね」という言葉を残して去っていく彼を私は黙って見つめている。
やっと出会えたのに。
ずっとその笑顔を待ってたのに。
お願い。
待って。
行かないで。
ずっと一緒にいたいよ。
好き。
大好き。
私がいくら叫んでも彼の耳には届かない。彼が去っていくのを、見つめることしかできない。
彼が視界から消えてしまっても、私は動けなかった。彼が走って戻ってくる気がして。息を切らして戻ってきて、「ごめん!」って言って、もう一度、抱きしめてくれる気がして。

動けなかった。

動いてしまったら、彼が戻ってきた時に私を見失う気がして。

動けなかった。

いくら泣いても、彼が…あのランドセルの男の子が戻ってくるはずもないのに。

私はダンボール箱の中で泣くことしか出来なかった。

「ニャア…」
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公開:18/06/13 22:29
更新:18/06/14 07:28

のりてるぴか( ちばけん )

月の音色リスナーです。
ショートショートって難しい。
最初の頃は400字は短すぎるなんて思ってましたが、色々書くうちに400字に無限の可能性を感じるようになりました。

読んだ人の心が少しでも動いたらいいな。何かを感じてくれたらいいなと思って書いてます。

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