消え行く流星

0
93

「今日獅子座流星群なんですよ、知ってました?」
ふふっと笑って君の指が夜空を差した。そう、君は星空が好きだった。いつも誰よりも早く流れ星を見つけた。その小さな指先をすうっと流して西の空をなぞる。
「私、流れ星にいつもこの病気が治りますようにって願っているんです」
こちらを振り返って少し視線をずらし、艶やかな黒髪を手櫛で整えた。
心の中でつぶやく。君の病は、治らないよ。
「ほらあそこ、今流れました」
不意に目を輝かせた君。その視線の先を追っても間に合わなかった。誰かの願いを乗せた星が宇宙の闇に消えていく。君の白い指が、ぼうっと光ったように気がした。
「先生の願いは?」
そんなこと、聞かないでおくれ。
僕の願いは、君とこうして星空を眺めていることなのだから。
治せなかった小さな遺骨を撫でて、一人夜空を眺める。
恋愛
公開:18/06/12 12:24

しのぶの( 仙台 )

謎解き×ショートショートの新しい短編集を発売中です。
https://www.amazon.co.jp/謎解きショートショート-謎解き物語-謎解き×ショートショートの新感覚短編小説集-しのぶの-ebook/dp/B07F2HQJPR

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容