かなわない願いは必ずかなう

『彼氏と別れられますように』
　彼女が、こっそり短冊にそう書いているのを見てしまった。
　そんなに僕と別れたいのか。七夕に願うほどに。
　愛し合っていると思っていた。すべては幻想でしかなかったのか。
　僕はその日のうちに、彼女の首を絞めて殺した。
　殺害後、彼女のスマホを調べた。もしかしたら浮気相手とメールのやり取りをしているかもしれない。もしそうなら、浮気相手も殺すつもりだった。
　彼女は友達に、こうメールしていた。
『絶対に願いがかなわないって噂の商店街の七夕飾りに、願掛けしてきたよー。彼氏とずっと一緒にいられるように、逆のお願いしてきちゃった（はぁと』
　なんてことだ。僕は取り返しのつかないことをしてしまった。死んで彼女に詫びるしかない。
　でもその前に、やるべきことがある。
　僕は短冊にこう書いて、先ほどの商店街へと走った。
『あの世で、決して彼女に会いませんように』