青いスーツケース

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僕を救ってくれる本がある。
泣きたくなる朝、孤独な夜、僕はその本を開く。
たまたま入った喫茶店で白髪の老婆二人が大きな声で話をしている。
眼鏡をかけた老婆が言う。
「あの本がどうして売れているかわからないわ。つまらない本なのに」
僕の好きな本の悪口を言っている。
もう一人の老婆は相槌を打っている。
僕は怒りをぶつけることもできず急いでアイスコーヒーを飲み干し、喫茶店を出た。
涙が出そうになるのを必死で抑え電車に乗る。
向かいに座っているサラリーマンの頭上には青いスーツケースが置いてある。
僕はじっと青いスーツケースを見つめていた。
少しだけ動いた気がした。
サラリーマンは眠っている。
ガタガタガタ‥と大きな音を立てているが誰も気付かない。
しばらくするとスーツケースがゆっくりと開いた。喫茶店にいた老婆の眼鏡が一瞬見えてまたバタンと閉まった。
僕は帰ったらあの本を読もう、と思い電車を降りた。
その他
公開:18/06/11 19:01

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