願いをつなぐ

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七夕の夜、父は言った。
「願いごとが叶うっていうのは、『願いごとが叶わない』ってことなんだ」
「どういうこと?」
「例えばこのケーキをお前が全部食べると、父さんも母さんも食べられない。願いごともそれと同じで、独り占めすると他の人の願いごとが叶わなくなる」
「なるほど」
「だから、もし願いごとが叶ったら、代わりに白い短冊を飾っておくんだよ」
「白い、短冊?」
「そう。次は他の誰かの願いごとを叶えてください、ってね」

私が志望校に合格した年。入籍した年。子供が生まれた年。
父は白い短冊を飾ってくれた。

そんな優しい父が亡くなった年。
悲しみに暮れる私をよそに、母は白い短冊を飾った。
「どうしてこんなときに白い短冊なの?」
私が問い詰めると、母は微笑んで言った。

「お父さんの遺言なのよ。『最高の家族とすごせて、これ以上ないくらい幸せでした』って」

白い短冊は、満足そうに夜風に揺れていた。
その他
公開:18/06/12 23:47
更新:18/06/12 23:52

UBEBE

おっさんになりましたが、夢は追い続けます

「小説は短く、人生は永く」

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