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長く家事をやっていても、食器洗いは好きになれなかった。
終えて料理を食べられる楽しみもなく、汚れを落とした後すすぎまである。
せめて皿が話でもしてくれたら気がまぎれるのに、と思っていると、「工場で日に晒された話でいい?」といきなり皿が語りかけてきた。
「もちろん」

互いの身の上、悩み、喜び。私たちは少しずついろいろな話をした。
食器洗いが好きになってきた頃、洗い終えた皿をやや離れた水切りかごに移そうとした私に向かって、皿は苦しそうに呟いた。
「あなたを奪ってどこかへ連れ去りたい」
「そんなことさらさら思ってないくせに」

程なくして。

「さらわれ……た。さらわれてた、とっくに」
と私は口にしていた。
指が震え手元が狂ったのだった。割れた皿の欠片に涙が落ちた。
そのとき、皿の声がした。

「泣かないで。未来のことを考えよう。……サラブレッドとブレッドが載る皿、どっちに転生してほしい?」
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公開:18/06/12 23:43
更新:18/06/17 00:28

UKITABI

ショートショート初心者です。
作品をたくさん書けるようになりたいです。

「潮目が変わって」(プチコン 海:優秀作)
「七夕サプライズ」(七夕ショートショートコンテスト:入選)
「最高の福利厚生」(働きたい会社 ショートショートコンテスト:入選)
選出いただきました。

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