天麩羅心中
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目の前で天麩羅を揚げる寡黙な御主人。私達は黙って、その仕事を見ていた。旬の野菜かぁ。私達の旬はとっくに過ぎた。茄子。私に内緒でこそこそと、ボケ茄子め。し、嫉妬、違う、獅子唐だ。あー、もう!
妻は最近、機嫌が悪い。妻への贈り物を後輩に相談したのが原因かも。あぁ、天麩羅はうまいのに気まずい。
御主人は私にキスの天麩羅を出した。唇に触れた瞬間にドキッとした。えっ、今のって。続けて、ハグの天麩羅が舌を優しく包む。
御主人は俺にかき揚げを出した。余りの旨さに妻を見た。髪をかきあげる妻の姿が色っぽい。
二人の視線が合う。思わず逸らす。
その瞬間、鍋の油が跳ねた。
「水臭くて、跳ねちまった」
御主人が口を開いた。
「天麩羅ってのは余熱で蒸して火を通す。今のあんたらは家に着く頃がちょうど……」
二人は席を立つと店を出た。
その夜、誤解はとけた。
衣を脱ぎ捨て、熱々の鍋に花を咲かせて、サクッとね。
妻は最近、機嫌が悪い。妻への贈り物を後輩に相談したのが原因かも。あぁ、天麩羅はうまいのに気まずい。
御主人は私にキスの天麩羅を出した。唇に触れた瞬間にドキッとした。えっ、今のって。続けて、ハグの天麩羅が舌を優しく包む。
御主人は俺にかき揚げを出した。余りの旨さに妻を見た。髪をかきあげる妻の姿が色っぽい。
二人の視線が合う。思わず逸らす。
その瞬間、鍋の油が跳ねた。
「水臭くて、跳ねちまった」
御主人が口を開いた。
「天麩羅ってのは余熱で蒸して火を通す。今のあんたらは家に着く頃がちょうど……」
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衣を脱ぎ捨て、熱々の鍋に花を咲かせて、サクッとね。
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公開:18/06/12 20:11
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