紅霧神社の千日参り

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長い石段を男は一人登っている。
草木も眠る丑三つ刻。今日がちょうど千日目。
息を切らし力を振り絞って登り切ると、境内に突如 紅い霧が立ち込めた。
「よくぞ頑張った。お前の願いを叶えよう」
現れたのはこの神社の神。
男は迷いなく言った。
「私の願いは、故郷に残してきた母の健康だけです」
「それは叶えられん」
「え?なぜですか?」
「お前の母はもう…」
「もう?」
「もう、丈夫な身体になっておる」
「…はい?」
「お前の母も故郷で毎日参っておった。そのおかげで丈夫な足腰を手に入れた。わしがする事は何もない」
「そうなんですか」
「母が願ったのもお前の健康。それも今日までの参拝で既に叶っておる。困ったもんじゃ」
そう言いながらどこか嬉しそうだ。
「たまには母親に会いに帰りなさい。これはわしの頼みだ」
再び紅い霧が立ち込め、神は姿を消した。
男の財布には、いつのまにか故郷までの切符が入っていた。
ファンタジー
公開:18/06/10 22:03

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