幾千年の願い

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七月七日。

僕は、巡り会うという日、彼女に別れを告げた。三度目の七夕だった。

私は、彼との関係に終止符を打った。「幸せに」と短冊に書き、彼の部屋を去った。

夕空に星が灯った。

歩きだしていた。それは、見えない糸に手繰り寄せられるように……。

架け橋の眼下には大河が流れていた。

向こうから見知らぬ人が来る。

立ち止まり僕を見ている。
立ち止まり私を見ている。

瞳の奥から僕を呼んでいる。
瞳の奥から私を呼んでいる。

なぜ、涙が出るんだろう。

会うべき人なのかもしれない。運命の出会いなんて……でも。

「話しませんか。僕と」
「話しませんか。私と」

それが、二人の始まりだった。

会うたびに、会えない日が苦しくなっていった。

二人の願いは、幾千年の時空を超え、託されたものなのかもしれない。

そして、二つの空欄にサインをした。

僕と、
私は、

結ばれた。

七月七日。
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公開:18/06/10 20:38
七夕 七月七日 運命

豊丸晃生( 大阪 )

ショートショートの神様、星 新一を崇拝しています。お笑い好きで怪談も好き。
お笑いネタのような作品が多いですね(笑)
【受賞作品】
「渋谷シティ」
渋谷ショートショートコンテスト優秀賞受賞。
「我が家の食卓」
ベルモニーショートショートコンテスト入賞。
「電車家族」
隕石家族ショートショートコンテスト入賞。
「大男の力自慢大会」
「スカイフィッシング」
空想競技2020ショートショートコンテストW入賞。

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