しずくの返事

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父さんが死んでもうすぐ一年が経つ。

最初は「寂しい」とは違うけど多分これが本当の寂しいなのかな。
という様な気持ちに毎日触られていたけど最近それも薄まってきた。

僕は風呂が好きで毎日湯船に浸かる派なのだが、父さんの死後僕は長風呂になった。

「父さん、今日も居る?毎日飽きないね」

そう心で言うと、どこからともなく「ポタッ」と水滴が落ちる。
「今日はあまりいい一日じゃなかったよ。明日はうまくいくかな」そう言うと
またポタッ。

「適当に返事してるだろう。」そう茶化して言うと
ポタポタポタポタポタ…!と大量のしずくが僕の体や天井から落ちる。

これが僕の思い込みだと思う人が居るだろう。いや、ほとんどそうだろう。
でも無理に自分の寂しさを慰めてるわけじゃ無いんだ。
信じる人はいないだろうし、言わないけど。
僕の時間を自然に生きてるだけさ。


するとまた一つ、大きなしずくがボタンと落ちた。
公開:18/06/10 15:47

二十一 七月

にそいち なながつ

まずは100話お話を作るのが目標です。

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