前髪の素行不良相談会

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その相談会は、毎週金曜日に行われる。
参加人数に上限はなく、所謂困っている人の駆け込み寺のような存在だ。
 
「うちのは、すぐに家出しちゃうんです。連れ戻しても連れ戻しても、すぐに横の髪と混ざってしまって……」

「うちは協調性がなくて。なかなか周りと馴染まないんです」

「うちのはお恥ずかしながら……跳ねっ返りが強いところがありまして。何度なでつけても効果のほどは今ひとつ……」

相談役はそれぞれの悩みを聞き届けると、ひとつ、深く頷いた。

「皆さんの仰りたいことはよくわかります。悩みもありましょう。時には嫌気が差すこともありましょう。それでもです。どんなことがあっても、ご自身の前髪を、見放さずに慈しんであげてください」 
本当にいなくなってしまってからでは、遅いのですから。

一同はこの言葉を前に、一様に黙した。
そうして慈しみ深く微笑む住職の頭部へ、静かに合掌をするのだった。
その他
公開:18/06/10 08:53
更新:18/06/12 06:48

ゆた

高野ユタというものでもあります。
幻想あたたか系、シュール系を書くのが好きです。

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