幻想動物見聞録・明宏の場合

見て頂きたいのがこのホルンです。僕のです。吹けますよ、趣味程度ですけどね。あれは月夜の晩だった。川べりで練習していましたらね、風がざあと吹きまして。少し目を細めたら、なんかすぽって入ったんです。ええ、少し重たいから間違いない。慌てて振ると、中になんかいるんです。気持ち悪いから家で分解したんです。だけどソイツがまた逃げる、暴れる、引き篭もる。困っていたら、中から声がしました。自分は蝸牛だが、殻が壊されてしまった。ここに住まわせてくれないか、と。まあ、僕は蝸牛は嫌いじゃないし、いいやって放ってます。音はちゃんと出るし。管内のお手入れはしてくれるって言うし。あと重さが……。実は僕、子どもを亡くしてね。ホルンが子どもみたいに思えるんです。ヤツには言わないけどね。
夜は晩酌に付き合ってくれるし、話し相手になってくれるし、いい相棒です。先生は蝸牛は好きですか？少し見ます？あ、ダメです。今は寝てますな。