ダルマ落し的に増えていく

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「ダルマ落とし的に増えるね」
またか。俺は舌打ちする。それを言うなら雪だるま式に増えるだ。
母の言いまちがいなど飽き飽きだ。だいたい、ジャクという名前も母のせいだ。キラキラではない、間違いネームだ。
母は『ジャック』という名前にしたかったが書類を出す時に『ッ』を書き忘れたのだ。
役所の人に「本当にこの名前でいいんですか?」と何度も聞かれ胸を張って「はい!」と答えたという。
「あんたの名前もダルマ落とし的にいい運を運んでくるから」
まるで俺の心中を覗いたかのようなタイミングの母の言葉。
「小さい『ッ』が抜けちゃったけど代わりに何か大きなものが入ってくるよ」
そう考えると悪い気はしないかな。

後日、母が「拾った!」と大きな『ツ』を持ち帰った。ジャツクになれってか。
俺は『ツ』をぶん投げた。『ツ』はごろごろ転がり『シ』になった。母が叫ぶ。
「ジシャク!」
それ以来俺は幸運を引き寄せ続けている。
青春
公開:18/06/09 21:13
更新:18/06/11 01:41

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