普通の幸せ

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「願い事はどうですか?」駅前で短冊を一枚手渡された。
七夕か……。仕事と彼女と、頭も良くなりたいし何より金が欲しい! よし、この際何でも書いてやれ!
「短冊もう5枚下さい!」

『出世できますように』
『彼女ができますように』
『天才に……』
『大金持ちに……』……

ドスン!
後ろで何か落ちる音がした。
「兄ちゃん、ずいぶん欲張りじゃねーか」
振り返ると羽衣の女性が近づいてきた。
「そんなもん叶うわけねーだろ!」
織姫様!と遠くから老人らが駆け寄ってくる。
「それより兄ちゃん、あれやってみて。ぐるぐるバットで10回まわって間髪入れずにおはぎ食う特技。やってみて、やってみて、やってみて、やってみて」
「織姫様、ご乱心!」老人らは彼女を抱え上げ、彦星様が待っておられると宇宙へ連れて帰っていった。

僕は吊るした短冊を全て破り捨てた。そして新たに一枚笹に吊るした。

『普通に暮らせますように』
ファンタジー
公開:18/06/09 20:58
更新:18/06/16 19:27

数理十九

第27回ゆきのまち幻想文学賞「大湊ホテル」入選
第28回ゆきのまち幻想文学賞「永下のトンネル」長編佳作
一期一会。
気の向くままに書いては、読んで、コメントしています。
特に数学・物理系のショートショートにはすぐに化学反応(?)します。
ガチの数学ショートショートを投稿したいのですが、数式が打てない…
書こうと考えてもダメで、ふと閃いたら書けるタイプ。
最近は定期投稿できてないですが、アイデアたまったら気ままに出没します。

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