天国への切符

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「大当たり!」
カランカランと盛大に鐘をならしオヤジが叫んだ。
「一等は天国への切符でーす!」
バーコード頭のオヤジは背に白い羽根、頭に光る輪をつけている。
「これが賞品です」
渡されたペラ紙には雑に「天国行き」とだけ。
「どうします、すぐ行きます?」
オヤジの鼻息が荒い。
「これって片道切符?」
「もちろんです」
切符を見つめ人生を振り返る。子供も手を離れ、孫の顔も見た。福引で一等を当てるという願いも叶った。
「行きます」
「どうぞ負ぶさってください」
オヤジは背中を向けて中腰になる。
「は?」
「飛んでいきますから」
羽根がパタパタ動く。
「嫌だ」
「まあ、そう言わず」
「帰る!」
言うと目の前が真っ白になった。
気づくと病院のベッドの上だった。家族がよかったと泣いていた。
天国に興味はあるがあの天使の背中で旅するのはごめんだ。

長寿社会になったのは案外あの天使のおかげかもしれない。
ファンタジー
公開:18/06/07 01:31
更新:18/06/07 02:42

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