願いごと当番

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暦を見て思い出す。
そういえば今年は「願いごと当番」だ。

七夕の夜、短冊に綴られた願い事は笹の葉の音にのって天に届く。
そして小さな光に変わり、天の川に浮かんでゆっくりと流れていく。

ここからが当番の仕事で、たくさんの願い事を種類ごとに分類して色をつけていく。
夢、恋愛、仕事、健康など、得意分野の神様に届くようにするためだ。
これがなかなか骨が折れる。
最近では願い事の種類も数も増えすぎて、分類が追いつかずに川がいっぱいになることも多い。
そうなると川から溢れた水が雨となって地上に零れてしまう。
とはいえ、空の上では関係なく分類作業は続くのだが。

それより困るのは気まぐれな神様たちで、気に入った願い事があると分類の色も見ないで持ち帰ってしまうことがある。
「ちゃんと『勝手に持ち帰らないでください』ってお願いしてるんだけどなぁ」
どうにも願い事というものは、人も神もままならないようだ。
ファンタジー
公開:18/06/08 17:23

天宵 遥

言葉遊びや少し不思議なお話が好きです。
SSGプチコン1「花」優秀賞入賞

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