とらいあげいん

4
118

「いらっしゃいませ。」
そのバーは駅前のビルの2階にある。「とらあげいん」というネオンサインが目印だ。
 いるのは物静かなマスターだけ。仕事でミスをして、重要なプロジェクトを外され、やけになっていた時にふらりと入った。
 この店には、2種類のカクテルしかない。「いんなーぴーす」と「とらいあげいん」。そして、出されるのはいつも「いんなーぴーす」だけ。内なる平和という意味を持つこのカクテルには、心を癒す力があるらしい。
 ここに通うようになって約1年。出世欲もなく、平和な毎日だ。でも、そろそろ本当は…。
 そう思った瞬間、マスターが僕の前にカクテルを置いた。
「『とらいあげいん』でございます。」


その晩、夢を見た。

僕は子どもで、野球の試合でミスをしてレギュラーを外され泣いていた。もうやめたい、自信もない。でも、
「もう一度やってごらん。」
温かい声に励まされ、僕は大きく頷いた。
ファンタジー
公開:18/06/08 13:03

むう( 地獄 )

人間界で書いたり読んだりしてる骸骨。白むうと黒むうがいます。読書、音楽、舞台、昆虫が好き。松尾スズキと大人計画を愛する。ショートショートマガジン『ベリショーズ 』編集。そるとばたあ@ことば遊びのマネージャー。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容