16. 日本大移動！

昔、七夕の日に起きた出来事──。

その頃の七夕は、世界の国名の書かれた紙が入れられた抽選箱から神様が一枚引き、当選した国の人々が最も希望する事を叶えるというもので、その年の当選は日本だった。
大多数の日本人の願いは
「ヨーロッパ旅行にもっと安く早く行けるようになること」
だったので神様は懸命に日本を離島を含めて丸ごと、大西洋のアイルランドの西側に移動させた。
フランスやイタリアに近くなり、週末毎にその辺りの観光地には日本人が溢れかえり皆ごきげん。

しかし漁業関係者や料理人たちは違った。海水が違うので和食に合う魚介類がなかなか採れないのだ。
そのうちに他の日本人たちも刺身の素材の美味しさを思いだし、不服を言い出した。
折角バカンスを楽しむのには最高な位置に引っ越せたのに、日本国民は署名を集め元に戻せと神様に嘆願書を提出した。

翌年の七夕、渋々神様は日本を元の位置にお戻しになったそうな。