わすれもの

2
103

その日はひどい雨だった
前髪がうまくまとまらないあの娘は
朝食もそこそこに僕を連れて町へ急いだ
降り続く雨のせいで町の人々はみんなどんよりとした顔をしていた

どしゃ降りの雨も夕方にはすっかりやんで
西日が水滴に反射してキラキラ輝いていた
今朝の湿気で前髪がくるくるになってしまったあの娘は
僕を連れて帰りの電車に乗り込んだ
くたくたに疲れたのかあの娘はいつの間にやら眠ってしまった
しばらくして家の近くの駅に電車が到着すると
あの娘は僕を置いて慌てて電車を飛び降りてしまった
その瞬間、背の高い青年が僕の手をひきあの娘の後を追って電車を飛び降りた
「すみません。これ」
「あ、ありがとうございます。これとてもお気にいりで…」
「よかったです。では」
そう言って青年はまた電車に飛び乗った

そして僕とあの娘は手を繋いで同じ家路についた
今日はなんでもない普通の日だけど僕にとっては特別な日になった
その他
公開:18/06/06 11:24
更新:18/06/06 13:02
6月 梅雨 日常

もえぞう( 福岡県 )

こんにちは。

思いついた事を気まぐれに投稿します。

詩を書くのが趣味で、

座右の銘は【シャツのボタンはいちばん上まで】です。

よろしくお願いします。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容