おとしもの

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隆は忘れっぽいうえに落としっぽい。
「なんだよ落としっぽいって」
隆は不満そうだが、まあ、こんなわけなの。

隆と並んで歩いているとジャリッと音がする。振り返ると隆の財布が落ちてる。
「え、俺の財布じゃないよね?」
私が隆にプレゼントしたの、忘れてる。拾ってやっても首を傾げてる。

隆は人の顔や名前も忘れる。私のこともしょっちゅう忘れて新しい恋人を作る。
「え、俺、彼女いないよ?」
そんな隆の信用は地に落ちている。
でも隆はモテる。放っておけない感じが妙にセクシーなのだ。
ある日、隆が落としたスマホを交番に取りに行き、自分のものか判断できない隆の代わりに私が中身を確認した。
出るわ、出るわ、女のアドレスの山。

全員に連絡して一同に会した。
「えっと、始めまして?」
隆の言葉に女達はそろってため息をついた。
仕方ない。私達だって最近忘れっぽくなってるんだから。
私達はみんな、お年っぽい。
青春
公開:18/06/05 23:37

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