机上のバベル

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 「担当は彼なので、彼に聞いて」と不愛想な女が書類の山を指差した。
 一見、人がいるか分からない書類の山をぐるりと回ると、前傾姿勢で机にへばりつく男と、彼が隠れるほどの高さまで積まれた書類の山があった。
 これが社内で噂のバベルの塔かと思いながら、上司から頼まれた書類を取りに来たことを伝えると、寝癖だらけのボサボサ頭の男が気だるそうに書類の山を指差して「俺忙しいから、ここから自分で探して」と言い放った。
 文句を言っても仕方がないので、私は書類の山が雪崩を起こさないよう慎重に持ち上げながら探すことにした。
 そこに、しびれを切らした上司がやってきた。
 私が事情を全て話すと、雷のような上司の怒りが彼へと落ちた。
 慌てた彼が立ち上がろうとして机にぶつかり、そびえたっていた書類の山が崩れた。
 噂通り、確かにそれは、バベルの塔だった。
その他
公開:18/06/06 22:07
更新:18/08/05 18:59

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