落とし鬼

新しい鬼ごっこ考えたぜ、と誰が言ったのだったか。落とし鬼だ。タッチかジャングルジムから落ちたやつも鬼になるルールだ、と。
それは面白そうに思えた。
誰かが鬼と決まり、十数える間に、鬼でない子たちはジャングルジムの頂上まで登った。
行くよー！との鬼の合図で始まった。
鬼は速かった。あっという間に登ってきて、一人の子の足を掴んだ。アッと声がして、その後、ガガガっと音がした。下からうめき声。彼は落とされたのだ。
ようし、次！と鬼は言った。
私たちはパニックになった。冗談じゃない。落とされてたまるか、と。
鬼の方へ、一人が蹴飛ばされた。落とされれば次の子が、次、次と生贄は増えていった。
次は、私だ。そう直感した。私も、下の合唱に加わることになるのか。
落とされたくない、と思った。
蹴飛ばされるより、鬼の来るより早く、頂上に二つ足で立ち、次の瞬間、飛んだ。
私は、逃げるために。
下は、見えなかった。