初めての七夕

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「お父さんいなくて寂しくない?」
「寂しくなんかないよ。だってお母さんがいるんだもん」
「そう」
「お母さん、何で泣いてるの」
「ううん、ちょっと目にゴミが・・ほら見て、星がたくさん」
「うわあ!」
「今日は七夕だから短冊に願い事書きましょう」
「願い事?」
「短冊に願い事ん書いてつるすと叶うのよ」
「へえー。じゃあ僕、いっぱいいっぱい友達ができますようにってお願いする」
「じゃあ、お母さんはこれからいっぱいいっぱい楽しいことがありますようにってお願い・・・あれ?笹がない。ねえ、ここに置いてあった笹、知らない?」
「え?笹がどうかしたの」
「笹にね、短冊をつるすのよ」
「え?!」
「もしかして」
「うん・・食べちゃった」
「そう」
「ごめんなさい。僕・・」
「明日また飼育員さんにもらいましょ。一日遅れの七夕でもいいじゃない」
格子越し、パンダの親子の見上げた空に満天の星が広がっていた。
その他
公開:18/06/05 22:38

杉野圭志

元・松山帖句です。

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