釣り師

3
107

一杯ひっかけて気分良く歩いてるといつのまにか知らない道に迷い込んだ。
これだから下町は面倒だ。
後ろから坊主頭の男が来たので道を尋ねた。
ふと男が手に持っている竿が目に入った。
「釣りですか?」
「ええ、まあ」
「私も好きなんですよ釣り。あ、田舎にいた頃の話ですが」
「ああそうですか」男は愛想なく歩き去った。
もしかして近くに釣り堀でもあるのか?
俺は男の後をこっそり追った。
路地を曲がった所で、男はやおら竿を取り出し糸を垂らし始めた。
こんなアスファルトの地面に何やって・・え?!
地面がちゃぷんと波打ったかと思うと、糸がするすると地面の中に落ちて行く。瞬間、男の持つ竿の先がぐわんと地面に向かって引っ張られた。
男が一気に竿をしゃくり上げると地面から、濡れた青白い女の顔が飛び出た。
「うわあああ!」
「下がって!」
袈裟を着た坊主頭が叫んだ。
「これは後海と言って地縛霊が潜む海なんです」
ホラー
公開:18/06/05 22:16
更新:18/06/17 10:24

杉野圭志

元・松山帖句です。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容