風筒

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ある日のこと。
街の文房具屋で不思議なものを見つけた。

その名も“風筒”。

見た目はいたって普通。
何の変哲もない、白い封筒だ。

でも、説明書きには…
“切手いらずの優れもの!”
“便箋入れて 風に乗せるだけ!”

好奇心には勝てない。
迷わず、風筒とやらを手にレジへ。

家に帰り、早速手紙を書いた。
宛先はT高校図書館の司書T先生。
風筒に入れ、初夏の風に乗せる。

ある日、風に乗ってT先生からの手紙が届いた。

手紙は潮風の匂いが染みていた。

僕が青春を過ごした、あの街。
ほんの数ヶ月前まで住んでいた街。
想い出で溢れている僕の街…。

潮風に包まれ、僕は上京してから初めての涙を流した。
公開:18/06/05 21:24

すみれ( どこか。 )

書くこと、読むことが大好きな社会人3年生。
青空に浮かぶ白い雲のように、のんびり紡いでいます。
・プチコン「新生活」 優秀賞『また、ふたりで』
・ショートショートコンテスト「節目」 入賞『涯灯』



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