トランクキッズ
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父さんの部屋に置いてある大きくて茶色いトランク。僕は生まれた時から、ここに住んでいる。誰もいない時にトランクから抜け出して、キッチンでこっそり食べ物を漁ったり、シャワーを浴びたり、トイレに行ったりしてる。だから、父さん以外は僕がここに住んでいるって誰も知らないんだ。
母さん?兄弟?わからないな。だって僕はもうずっと誰にも会っていないんだもの。僕には名前もないし。服もない。僕にあるのはトランクだけだ。
誰にも会わないから、時々僕はもう死んでて、魂だけがトランクから出たり入ったりしてるんじゃないかって、そんな怖いことを考えたりもするんだ。
「どうしたの?難しい顔してトランクを睨んだりして。」
女は男の顔を覗き込んで聞いた。男はふと、我に返ったように言った。
「いや、あのトランク…。そういえばもう何年も使ってないけど、何が入っていたっけな。」
母さん?兄弟?わからないな。だって僕はもうずっと誰にも会っていないんだもの。僕には名前もないし。服もない。僕にあるのはトランクだけだ。
誰にも会わないから、時々僕はもう死んでて、魂だけがトランクから出たり入ったりしてるんじゃないかって、そんな怖いことを考えたりもするんだ。
「どうしたの?難しい顔してトランクを睨んだりして。」
女は男の顔を覗き込んで聞いた。男はふと、我に返ったように言った。
「いや、あのトランク…。そういえばもう何年も使ってないけど、何が入っていたっけな。」
ホラー
公開:18/06/05 17:27
人間界で書いたり読んだりしてる骸骨。白むうと黒むうがいます。読書、音楽、舞台、昆虫が好き。松尾スズキと大人計画を愛する。ショートショートマガジン『ベリショーズ 』編集。そるとばたあ@ことば遊びのマネージャー。
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