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私は朝の散歩が好きだ。
穏やかな波を眺めながらゆっくりと砂浜の上を歩く。
水色の空に薄い雲が浮かんで、また1日が始まるのが分かる。

清々しい気持ちであるけれど、愛犬のハリイが一緒に居ないのが痛い。
ハリイは去年死んでしまった。
どこへ行くにも一緒で、大事なパートナーだった。    
特に私たちは、この朝の散歩が大好きだった。

死んだ犬が帰ってくるはずはないと分かっていたが、
「彼が今、ここにいたら」と願わずにはいられない。

暖かい風が水平線の方から吹いてくる。今日も暑くなりそうだ。
何とはなく、後ろを振り向いてみる。
私の足跡に寄り添うハリイの足跡が、濡れた砂の上に見えたような気がしたが、打ち寄せる波に消されてしまった。
その他
公開:18/06/05 05:32
更新:18/06/07 06:14

まくの沙江

自分なりのショートショートができればいいと、投稿させてもらっています。
皆様の作品やコメントは、新しいアイディアが生まれて勉強になります!

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